オレは店に入ってビールを頼んだ。ネクタイを緩めながら暖色の電球の入った提灯を見上げてふぅと息をつく。
運ばれてきたジョッキを持ち上げるとぐいっと呑む。ビールのうまさは一口目の喉ごし。そこに乾杯する相手などいらない。
都会で生きていくには多少の意地を張らなくちゃいけない。その意地が何なのかは人それぞれだけど、オレの場合は、独りの時間を楽しむことだった。みんなでとか、恋人とかと過ごす時間が嫌いではない。それらを否定するつもりはないけど、独りで過ごすことを、それを楽しむことのは、オレの大切な時間だ。少し意地を張っているのは自分でわかっている。でも性分でもある。
呑んでいるとメールが来た。母からだった。いつまでもオレを心配する母さん。昔はうるさいと思ってたけど、連絡の回数は度を越した頻度ではないし、受けとめないとなと今は思う。孫の顔がみたいだろうに…
メールを開けた
『(原文まま)だいぶ暖かくなりましたけど、元気ですか。一昨日はお墓参りに行ってきましたがこの頃はお父さんが一緒で助かります。では又ね~』
オレが知らないうちに随分ラブラブになったもんだな、おい!