ロジパラさんを目指してた!

はてな日記で書いてた頃の冗談日記

ラフロイを飲みながら

※オチないです。たまにはまじめにね(^^)  なげーです。


 地元で連れて行かれたバーで薦められたシングルモルトは懐かしい酒だった。

口に入れた時、黒を基調としたカウンター席しかない小さな店内を思い出し、

喉を通った時、行動力抜群のRちゃんを思い出し、

残る余韻に、一期一会のお客さんたちとした会話とバックに流れていたジャズを思い出した。



 好奇心からその飲み屋街に足を踏み入れたのは先のことを悩んでいたときだった。窓もないような閉鎖的な店が多い中で、店の中が外からのぞける店を見つけてツレとそこで呑んだ。そこで店の人と話をして教えてもらったのがジャズバー B。閉鎖的なドアをツレがあけると店内は薄暗く聞いたことのない音楽が流れていた。そしてカウンターの中にいたのが、その日にたまたま店番をしていたのがRちゃんだった。フォアローゼスも知らなかったオレが言い放った「いい酒」という抽象的な注文に「ちょっと値は張っちゃうんですけど...」とRちゃんが言いながら出してくれたのがラフロイ、その後オレが「緑のヤツ」とオーダーする酒である。


 Rちゃんはオレにないものを持っていた。物事に対して先入観で門前払いをすることなく、やってみて受け入れるか判断する行動力。一度始めても合わないと思えば惰性や周囲に合わせて続けることはなくスパっと見極める決断力。そして生まれながらのポジティブ精神。


 オレのポジティブ精神は後天的で理屈の産物だった。社会に出てからも半引きこもりのゲーマーだったオレは「これじゃいかん!」と思って無理やり行動を起こしている部分がある。そのマイナスから無理やり生み出したプラス思考はオレ自身が拒絶反応を起こすこともある。だけど彼女は違った。根っからの行動派だった。話していると活力が湧いてきた。そしてオレはしばらく通い始める。ラフロイを呑むために、元気を分けてもらうために、オレが渇望しても得られないものを持っている彼女に会うために。「恋」というより「尊敬」という言葉の方が近かったように思う。当時、受ける影響はあっても何も与えることが出来ない自分が少し歯がゆかったりもした。


 7月、Rちゃんは単身でドイツに一ヵ月旅行に旅立っていった。知り合いの家やユースホテルを泊まり渡るという。言葉も分からないのに。「日本が好き」と嘯くオレにはできないことである。その後、Rちゃんが戻ってきて姉妹店のGで働く頃には、オレが忙しくなってしまい、ほとんど行かずじまいだった。




そしてこの間、ラフロイを飲んだ。

口に入れた時、黒を基調としたカウンター席しかない小さな店内を思い出し、

喉を通った時、行動力抜群のRちゃんを思い出し、

残る余韻に、一期一会のお客さんたちとした会話とバックに流れていたジャズを思い出した。




 先週の木曜日、早めに仕事が終わったオレは新宿に向かった。歌舞伎町の隣にあるゴールデン街。最後にこの街に足を踏み入れたのは年末だから四ヶ月ぶりか。Rちゃんはいないかもと思っていた。ただ、職や価値観や歩いてきた道がオレとは違う人たちとラフロイを飲みながら話が出来れば、仕事しか今年の思い出がない自分を変えられるかもと思っていた。

 半年振りにGのドアを開けた。カウンターの中にいたのはRちゃんではなかった。バイトの曜日が変わったのか、別の世界に旅立ったのか。賑わう店内でオレは丸い椅子に座ってラフロイを頼む。一杯目を飲みきる頃、遅番だったRちゃんが来た。変わらず元気そうである。Rちゃんはオレを見て破顔した。それがうれしい。


-今日でバイトをやめることを聞いた。


 ラフロイが呼んだ偶然はオレに「がんばってね!」と言葉を送るチャンスを与えてくれた。明るい方向にオレに影響を与えてくれたRちゃん。もう会うこともないかもしれないけど、ポジティブなRちゃんでいてください。





・オレの呼び方に沿って書いてありますが、ラフロイのホントの名前は「ラフロイグ」、もしくは「ラフロイグ カスク」です。

・きれいに書いたつもりだけど、読みようによってはオレの情けなさ全開ですな(笑)

・ラストがちょっと足りないかもね。先週の木曜日のことがもうちょっと厚く書ければよかったんだけど....